千年に一度の「惑星直列」とは?

文:Dr. Paul E Cizdziel

私は、ここ5〜10年の間に独学で天文学を学んできました。もともとは生物科学の分野でキャリアを歩んできましたが、歳を重ねるにつれて、宇宙への興味が強まり、いつの間にか天文学のトリコになっていました。    

そんな私がよく聞かれるのが「惑星直列」についての質問です。惑星直列とは、複数の惑星が、地球から見たときにほぼ一直線に並ぶ現象のことです。これは見た目のインパクトからYouTubeやSNSでよく話題になっています。宇宙に興味のある人だったら、「千年に一度の惑星直列!」といった見出しの動画を見かけたことがあるかも知れません。こういう類の動画の内容が間違っているわけではないですが、「千年に一度」ほど珍しい現象ではないのです。 

もっと言えば、惑星は常に「整列」しているのです。
どういうわけか説明してみましょう。
今から40〜50億年前、太陽系が形成された際、重力によってガスや塵が渦を巻き、それが次第にまとまって太陽や惑星が誕生しました。この過程で、惑星は自然とほぼ同じ平面上を公転するようになりました。この平面を「黄道面」と呼びます。

そして今、46億年経った現在でも、惑星はこの黄道面を公転し続けています。地球の自転軸はこの平面に対して傾いているため、夜空を見上げると、すべての惑星が同じ弧(黄道)に沿って動いているように見えることがあるのです。つまり、惑星は太陽系誕生以来ずっと整列しているというわけです。   

夜空の星々(恒星)は、地球の自転によって東から西へ移動するように見えます。惑星も同じように動きますが、恒星よりわずかに遅く動くのが特徴です。(ただし「逆行(レトログレード・モーション)」と呼ばれる例外もあります。)
また、恒星の背景に対する惑星の位置の変化には違いがあります。特に火星や木星は地球に比較的近いため、位置の変化がはっきりと分かります。一方で、土星、天王星、海王星のような遠い惑星は、ほとんど動いていないように見えます。そのため、火星や木星が、より遠くにある惑星を「追い越している」ように感じることがあるのです。
 また、水星と金星は太陽に非常に近い軌道を公転しているため、朝または夕方にしか見ることができません。そのため、夜遅くにこれらの惑星を探しても見つからないのです。 

惑星が夜空で近くに見えることは実はよくあります。
これは、すべての惑星が黄道面上を公転しているためです。しかし、SNSではこうした普通の現象が大げさに取り上げられることが多く、まるで奇跡のように語られることがあります。

さらに、「どれくらい近づいたら特別なのか?」という基準は主観的なものです。ある人は「すごく接近している!」と感じるかもしれませんが、別の人にとっては「そこまで近くない」と思うこともあります。   

惑星が特に近づき、双眼鏡や望遠鏡で同じ視野内に収まるほど接近することがあります。
このような現象は、専門用語で「合(ごう)」または「最接近」 と呼ばれます。

この接近状態は数日間続き、その後、惑星同士が再び離れていきます。

ただし、これはあくまで地球から見たときの話です。実際には、惑星同士が何億キロも離れていることがほとんどで、本当に近づいているわけではありません。実際には「地球と別の遠い惑星(または天体)の間を他の惑星が通過する」ような位置関係になることを意味しています。つまり、一方の惑星がもう一方よりはるか遠くにある場合でも、地球から見ると並んでいるように見えるのです。

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サイエンスアドバイザー Dr. Paul E. Cizdziel からのメッセージ

Laurus Internaitonal School of Science初中等部のキャンパス内にある「Ad Astra ルーム」は、主に宇宙科学に関する教育に特化した学習スペースです。宇宙科学は、これからの時代に欠かせない分野であり、教育の中でもますます重要性を増しています。<br><br>この分野には、私のようなアマチュアの天体写真愛好家から、航空宇宙工学、政府機関、研究機関、さらには急成長を遂げ、多くのチャンスが広がる商業宇宙産業まで、幅広い領域が含まれます。<br><br>このブログでは、そうしたさまざまな分野の最新トピックについて、生徒や保護者の皆さんが興味を持てるような情報を定期的に発信していきたいと思います。

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